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第35回武富士長男事件を振り返る
投稿者: Webcrew_01 掲載日: 2010-7-1(3490ヒット)

海外で資産運用するときに気を付けるべきポイントの一つは、贈与&相続対策です。最近、本件に関する問い合わせが増えてきたので、過去の事例を参照しながら説明させて頂きます。

日本居住者もしくは海外居住者が、日本居住者である両親から海外資産の贈与・相続を受ける場合は、日本国内の法律が適用されて、一定金額を超える資産の贈与・相続については課税対象となります。海外に5年以上住む海外居住者が、同じく海外に5年以上住む両親から海外資産の贈与・相続を受ける場合のみ非課税という理解になると思います。但し、日本に自分が住むための持ち家がある、仕事で日本へ頻繁に出張しているなどの事実がある場合、海外で年間183日以上滞在していても、海外居住者とは認められず、日本国内で課税される可能性があります。

本件を理解するのに参考になる事例が、2008年1月に高裁判決が下された「武富士長男事件」です。以下、オールアバウト記事の抜粋です。

長男は、1997年に海外転出、香港在留邦人となりました。香港移住に際しては現地法人を設立、その代表を務めるとともに、当然ながら香港に住まいを構え、「香港居民」としての出入境(イミグレーション)が可能なIDカードも保有していました。香港にはベンチャー投資会社を2社設立したといいますから、その代表を務める長男は、投資ビザもしくはそれに準ずる就労可能なビザを取得していたと思われます。

そもそもこの事件は長男の海外転出と同時期に、前会長夫妻が個人名義で所有する武富士株を、夫妻らが設立したオランダの現地法人に売却したことに端を発します。その後、武富士は東証1部に上場、オランダ法人の株価も上がりました。さらに夫妻らは、オランダ法人の株式90%を、香港在住の長男に贈与。国外財産にあたるうえ、贈与を受けた長男は日本の非居住者のため、その時点では贈与税の対象にはなりませんでした。贈与の時期は、99年の暮れのことだったといいます。

今回のケースは、多くの資産家が利用したオーソドックスな節税方法のひとつです。かつては税法上、非居住者への課税は国内財産のみに限られていました。そのため、贈与する側(親)が国外に財産を移し、贈与を受ける側(子)が一時的に海外に住所を変えてのち国外で贈与を受ける、という課税逃れ目的の移住が増加したのです。世界一高いといわれる日本の税負担を回避しながら贈与できるというわけです。

こうした税の不公正を是正するため、2000年に税制の法改正が行われました。その結果、親子どちらかが贈与前5年以内に国内に居住していれば課税対象となると定められたのです。


本事件は税法上の居住者の定義が争われましたが、国税庁はHPのタックスアンサーで、以下のように回答しています。

日本国内に生活の本拠があるかどうかは、本人の主観(永住の意思の有無など)によるのではなく、客観的事実によるものとされています。

ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになります。

滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。 1年の間に居住地を数か国にわたって転々と移動する、いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)」の場合であっても、その人の生活の本拠がわが国にあれば、わが国の居住者となります。


1年の183日以上を海外で暮していても「客観的事実」によって日本居住者とみなされる可能性があるのなら、この「客観的事実」の定義を巡って、これからも同様の裁判で争われる可能性が高いと思います。日本で税法上の居住者の明確なルールが定められていないので、客観的に見て、明らかに海外居住者であるとみなされるためには、日本国内の不動産とその他資産を全て売却して、全ての資産を海外口座に移し、家族全員が海外で永久居民ビザを取得して、実際にそこへ住まなければなりません。お金持ちの方であれば、そこまでする価値があるのかもしれませんが、われわれ一般庶民でそこまでできる人は少ないのではないでしょうか?私は日本を愛する両親に「香港へ住んでください」なんて口が裂けても言えません。医療と介護施設が充実した日本人村を香港に建設できれば良いのかもしれませんが・・。



香港在住ファイナンシャルアドバイザー
木津 英隆
Email: hidetaka.kitsu@gmail.com

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