JALの企業年金減額問題は、今後、減額や解散が予想される日本の企業年金問題の氷山の一角に過ぎません。企業に終身雇用されることで、老後を豊かに生きることを約束されていたはずの企業年金が行き詰まり、多くの日本企業が年金改革を迫られています。なぜこのような事態になってしまったのかを分析するとともに、日本企業に勤めるサラリーマンはどのような対策を取るべきなのか、香港在住FAとしての意見を述べます。
まず、11月30日の日経記事の一部を紹介させて頂きます。
とても実現しない高い運用利回りを前提にした企業年金は日航以外にも多い。それが経営を圧迫し、現役社員に賃下げなどの犠牲を強いるのも珍しくない。年金を減らすも地獄、減らさぬも地獄ーー。低成長低金利という現実に合わせ制度を維持するための道を考えなければならない。バブル期のように年6-7%の長期金利が続いていれば、4-5%の利息は楽々、稼げる。バブル崩壊後の低金利の定着で、環境ががらりと変わった。
企業年金が行き詰まった直接の原因は、バブル崩壊後の失われた20年間、低金利政策を長期間に渡って放置してきたため、企業年金が予定していた運用利回りを国債の運用だけでは稼げなくなり、不足する年金分を企業がコストを払って、損失補填する必要が生じたからです。年金の運用利回りを上げるため、株式の運用を増やしましたが、昨年の金融危機で資産価値が大きく目減りし、企業は追加の損失補填を迫られる結果となりました。こうなる前に予定利率を引き下げておけば良かったのですが、法律の壁により、簡単に年金の条件を変更することはできません。企業にとっては、確定給付型の年金を継続し続けることが、大きな経営リスクとなっています。
2001年から始まった確定拠出型の年金では、従業員の自己責任において株式の運用比率を高めることができるので、運用損失が発生した場合においても、企業が損失を補填する必要はありません。しかし、従来型の確定給付年金では、株式の運用で損失が発生した場合、企業が損失を穴埋めする義務が生じます。いまだに多くの日本企業が確定給付型の年金を採用しているため、日本経済の低成長・低金利環境が続く限り、企業は年金不足分を穴埋めするコストを払い続けなければなりません。年金の減額が許されるのは、母体企業の経営状況の悪化などにより、企業年金を廃止する事態が迫っている状況に限定される、との判例が出ています。つまり、企業は倒産の危機に追い込まれるまで、年金不足コストを払い続けなければなりません。
細谷英二りそなホールディングス会長は、「日本人は危機が迫る前に予防的に手を打つのが不得意」と語っています。これからも企業年金問題により、経営が圧迫される企業が続出することが予想されます。JALのような大企業に勤めていても、安心することはできません。日本の現役サラリーマン世代は、賃下げなどにより、OBの企業年金を維持するためのツケを払い続けなければなりません。そして自身が定年を迎える頃には、自分の年金を払ってくれる現役世代がいない、という事態になる可能性も大いにあります。会社の制度として、確定拠出型の年金に移行できるのであれば、まだその方が良いでしょう。しかし、運用結果には自分自身で責任を取らなければなりません。
いままで株式や債券での運用に全く関心がなかった人達も、経済のことを勉強しなければならなくなっています。このような状況で、日本の投資教育が遅々として進まないことは、憂うべき事態と言えます。少しづつでも構いませんので、経済の仕組みを今から勉強し始めましょう。

香港在住ファイナンシャルアドバイザー 木津 英隆 Email: hidetaka.kitsu@gmail.com
筆者ブログはこちら 香港FA木津英隆のマネーは巡る http://blog.explore.ne.jp/kitsu/

(シンセンスクエア)
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